それは、嵐の夜でした。

ピカッ!と、稲光が、
森の 奥深くに立ちそびえる
古城を照らしました。

お城の壁面は、
草木で覆われ、
今にも崩れ落ちてしまいそうな、
なんとも不気味なお城でした。


「うまい。この血はうますぎる!」
ドラキュラの王が、
横たわっている人間の血を、
美味しそうに吸っています。


「諸君よ、我々にとって、命より大切なものは何か分かるか。」

王は、舞台の上から、
ドラキュラたちに問いかけた。


”グアァーーーッ!!!”

お腹が減って、
血に飢えているドラキュラたちは、
恐ろしい牙をむき出しにした。


「そうだ。我々にとって大切なのは、この牙である。」


ドラキュラは、牙で人間にかみつき、
体中の血液を吸いつくすのです。


ドラキュラの象徴、
命の源である 牙を大切にすることは、
ドラキュラとして当然のこと。


そのため、このお城では、月に一度、
歯科検診が行われるのです。


ギラギラ輝きを放つ、鋭い牙の中、
グラグラよわよわしい牙のドラキュラがいました。


恥ずかしそうに、そして痛そうに、
頬をおさえています。


「虫歯のドラキュラがいるなんて知れたら、
どうなることか!!」

「すぐに治療をしてくるのだ!!」

王はどなりつけました。


一人前のドラキュラになるにも、
やはり、日々の努力が必要なのです。









































inserted by FC2 system